〖BS〗ディーユ

夢の中の彼

時々、まだ、どうしようもなく兄の夢を見る。 繰り返すせいで、現実でもないのに記憶の一部になってしまった夢だ。「またあの夢だ」と夢の中でも分かる。 分かるのに、どうにもできない。 その無力さが、幼い頃の感覚の一部に、妙にリンクして、だから不思議…

ハニー

宿部屋でテオが出したハチミツを見たディーユは、ふいに笑ってこう言った。 「ああ、恋人の日だから?」 テオが貰ったハチミツだ。 くれたのは、教会の同僚だった。たくさんあるからお裾分けなのだと彼女は言っていて、渡されたのは透き通った琥珀色をした小…

ディーユ #30day

#30dayうちの子語りchallenge (@todomaguro0様よりお借りしました!) day1 30daysで語るキャラクター 名前:ディーユ 職業:戦闘型BS 外見:黒髪紫目 流し目 ドヤ含み笑い 内面:存外に繊細な、努力型の完璧厨 day2 誕生秘話先に殴りプリ×BSの話を書いてい…

リアリティ

ココモビーチに行ってきたという彼の話を聞いて、テオが思い浮かべたのは浜辺に並べたデッキチェアに寝転がるディーユだ。派手な柄のサーフパンツに、前なんて少しも閉めないラッシュガード。フルーツのささったカクテル片手に、サングラスをかけたまま寝転…

Wait until dark (2)

【分岐点の夜| A turning point in my life.】 【 Theo 】 ディーユくんと出会った日の夜、彼はそんな話をしてから突然、糸が切れたように眠ってしまった。心地のいい寝物語が終わってしまって、俺はしばらく彼の寝顔を眺めたまま、その静かな余韻を味わっ…

Wait until dark (1)

【プロローグ | Prologue】 少しだけ、俺の話をしようか。 シュヴァルツバルト領の僻地。ミッドガル大陸にあって、ルーンミッドガッツ王国の恩恵という名の監視を受けていない街。すべての支配からうまく逃げおおせた水の都。それがアルデバラン――俺の育っ…

ウィンナーを食う奴は馬鹿

酒の席で、ウィンナーを食べているときほど自分のことを愚鈍だと思う時間はない。 周囲に喧噪があって、隣には顔見知りの仲間が座っていて、テーブルには種類の乱雑なアルコールと、肴のフライドフィッシュや茹でたウィンナーがある。 その日の狩りの打ち上…

言ってない話

ディーユは、最近、男と寝た。 女と寝ることはあっても、男とはそうそうない。初めて男を食ったのは、以前の恋人だったクロウのときだ。誘われて、それに乗った。久しく会っていなかった幼馴染が、目を見張るほどの美青年に成長していたものだから、それをま…

ぬるくなったビール

少し、張りつめた空気を感じる。テロでもあったか、とクロウは投げやりにベンチへ腰を落とした。首都プロンテラに集う冒険者は、人口が多い分、強者も多い。たとえ街中にモンスターが湧いても普通なら三分程度で片が付いて、すぐに何もなかったようないつも…

噂話

「そういやアイツ、カノジョできたぜ」 「…は?」 たっぷり間を置いて、十秒、頭の中で飛びかった色々な言葉たちを何一つ捕まえることが出来ず、クトノはそうオウム返しに尋ねた。 「……カノジョ?」 「そう、カノジョ」 クロウはつまらなさそうに同じ言葉だ…