BSプリ(ディーユ×テオ)

意味のない夜

甘い小雨が降っている。 柔らかく、何の意味もない夜だ。 『明日行こうか?』とディーユが言った言葉を、頭の中だけで何度も転がしている。 そう言われて当たり前のような態度を取ってしまった。「今夜は無理なんだね」 なんで愚鈍な態度だろうと、後になっ…

ハニー

宿部屋でテオが出したハチミツを見たディーユは、ふいに笑ってこう言った。 「ああ、恋人の日だから?」 テオが貰ったハチミツだ。 くれたのは、教会の同僚だった。たくさんあるからお裾分けなのだと彼女は言っていて、渡されたのは透き通った琥珀色をした小…

リアリティ

ココモビーチに行ってきたという彼の話を聞いて、テオが思い浮かべたのは浜辺に並べたデッキチェアに寝転がるディーユだ。派手な柄のサーフパンツに、前なんて少しも閉めないラッシュガード。フルーツのささったカクテル片手に、サングラスをかけたまま寝転…

Wait until dark (2)

【分岐点の夜| A turning point in my life.】 【 Theo 】 ディーユくんと出会った日の夜、彼はそんな話をしてから突然、糸が切れたように眠ってしまった。心地のいい寝物語が終わってしまって、俺はしばらく彼の寝顔を眺めたまま、その静かな余韻を味わっ…

Wait until dark (1)

【プロローグ | Prologue】 少しだけ、俺の話をしようか。 シュヴァルツバルト領の僻地。ミッドガル大陸にあって、ルーンミッドガッツ王国の恩恵という名の監視を受けていない街。すべての支配からうまく逃げおおせた水の都。それがアルデバラン――俺の育っ…

ウィンナーを食う奴は馬鹿

酒の席で、ウィンナーを食べているときほど自分のことを愚鈍だと思う時間はない。 周囲に喧噪があって、隣には顔見知りの仲間が座っていて、テーブルには種類の乱雑なアルコールと、肴のフライドフィッシュや茹でたウィンナーがある。 その日の狩りの打ち上…

言ってない話

ディーユは、最近、男と寝た。 女と寝ることはあっても、男とはそうそうない。初めて男を食ったのは、以前の恋人だったクロウのときだ。誘われて、それに乗った。久しく会っていなかった幼馴染が、目を見張るほどの美青年に成長していたものだから、それをま…