〖Wiz〗フィオナ

Just the way you are

通り過ぎていく風はまだ肌寒いのに、日差しはもうすっかり春だった。暖かくなったプロンテラの街には当たり前のようにごった返した人々がいて、カリシュは人いきれにうんざりする。せっかく気温がまともになっても、こんなにあちこちに行きかう人間がいると…

まだ見たことがないあなたの

ない、と叫ぶ大きな声が廊下から繰り返し聞こえた。 宿屋の二階、昼下がりの静かな時間だったものだから、声はやけに響いていた。 不思議に思いフィオナが廊下へと顔を出せば、声がするのはギルド仲間の部屋からのようだった。開いた扉の入口付近に立つシェ…

フィオナ、眠っているのか?

「眠っているのか?」と声がした。 甘い甘い声だった。角砂糖の上に温めた蒸留酒を垂らしたみたいに、じゅわりと甘く、痺れるような錯覚がした。声はやがて体の奥に染み入り、熱をうんでから、拡散していく。声の語調に責めるニュアンスは含まれていない。た…

進化

久しぶりに用事でクロックの元を訪ねたら、女がいて驚いた。ただ、髪も肌も着ている服も、全身真っ白な女だったので、カリシュは彼女がホムンクルスのミッシーであることに辛うじて気づけた。白でなければあぶなかった。彼女はアルケミストのクロックが作っ…