やらせろ談義

「ツードさんは、俺が性欲の魔獣になったらどうするんですか」
「ん?」
「ツードさんは」
「ん? ん? スルガさん、一旦ビール置きましょうか」
「いや、酔ってませんよ」
「いいからいいから」
「いや、違いますよ、酔ってはいますよ、酔っ払い諭すような感じやめてください。そこまで酔ってないって意味ですよ、酔ってはいますよ酒飲んでんだから。耄碌するほど飲んでないって意味で」
「はーいはいはい」
「俺わりと本気で聞いてんだけどなぁ」
「……、いやだなぁ、スルガさん。それだとまるでいつもはスルガさんが性欲の魔獣じゃないみたいじゃないですか」
「その返しはどうかな?!」
「男はみんな性欲の魔獣ですよ」
「ツードさんに言われても、あんま、説得力が」
「そうです? 俺、魔獣だけどなぁ」
「じゃあ、俺が、その魔獣を食うぐらいの魔獣になっちゃったら、ツードさん、どうするんですか」
「あ」
「?」
「そういうこと。なるほど、そういう話だったんですね」
「何が」
「いや、だから、スルガさんの性欲が溜まりすぎて、俺に突っ込みたくなりすぎて押し倒して待ったナシ5秒前だったら、それ、どうやって回避するつもりなんですか?ってことでしょ、つまり」
「……露骨だなぁ」
「いや、そうでしょ」
「元も子もないなぁ」
「俺はいつも自分の尻の心配してますからね」
「意識はしてんですね」
「スルガさんの尻の心配もしてますけどね」
「痛み入ります。でもまあそっちよりも性欲の心配してほしいですね、わりとマジで」
「俺とのセックスで性欲解消されないです?」
「してるかなああ? あれは、していると言うのかなぁあ」
「ちんこの満足度が低いと」
「その言い方もなあああ?」
「すみません、俺、ふがいないなあ」
「そんな棒読みで言われても」
「恋人ひとつ満足させられない自分が、ほんとーにふがいないです」
「……まあ、いや、そんな、満足してないわけでは」
「ほんとですか? すみませんなんか、俺のちんこばっかり満足しちゃって」
「いや、それだよ、そこですよ、自覚あんじゃねえか、なに笑ってんですか、分かってて言ってるでしょ」
「いやぁ、まあ。往生際悪いなぁ、スルガさんも。話ついたでしょう、その件は」
「ついてないです」
「へえ」
「ついてないですよ。一旦でしょ、一旦」
「そんな食い気味に来られても」
「そうやってはぐらかして。ある日俺がプツンといっちゃったら、どうするつもりなんですか、って」
「それはねえ、……常々考えてはいるんですよ」
「あ、考えてるんですね」
「考えてます考えてます。考えすぎてて昼も眠れない」
「夜だけ寝てろよ」
「まあ、フェアじゃないわけじゃないですか」
「はあ」
「スルガさんが不満なのも分かるんですよねえ」
「まあ、はい」
「じゃあ、いつまでもこのままだったら、俺、フられちゃうのかなあ?とか」
「ん? え?」
「俺、フられちゃうんですかねえ?」
「え、なんでですか」
「今、フられてる最中です?」
「今!? 違いますよ!」
「俺が身体許さなかったら、スルガさんが痺れ切らしちゃうかなぁって」
「俺は、そんな……っていうか、いや、別に無理じいしたいわけじゃなくて、……えっと、別れるとかでもなくて、ツードさんが嫌なのは……分かるし、付き合ってもらってるのは、俺の……」
「いや、それは俺も。好きで付き合ってるんで」
「……ツードさん」
「うーん。俺も、ちゃんと、考えてはいるんで……もうちょっとだけ、待ってもらえます?」
「……まあ。……はい」
「よかったです」
「まあ」
「ほら」
「え?」
「ほら。こうすれば、大丈夫ですよ、スルガさんが性欲の魔獣になったら」
「はい?」
「いや、だから今のくだりを」
「はあああ? なに眉ひとつ動かさないで言ってんです?? ド畜生か??」
「スルガさんは、俺が処女みたいなこと言ってればチョロいんで」
「タネあかしが杜撰かつ露骨!!」
「いやいや。俺は広義での処女なんで」
「こんな開き直った処女います!? 飛び込んでみましょうよ、一回やってみたら案外平気ですよ、痛いのは初めだけで後は痛くないよ、もうみんなやってるよ?」
「わー、一次職の誘い文句だ」
「実体験入ってるから、信憑性ありますよ」
「んーーー、痛いとか痛くないとかじゃ、ないんですよねえ」
「分かりますよ、分かりますけど」
「いや、俺も分かるんですよ、言ってることは。スルガさん前衛だし、俺じゃあ力負けするし、いつか押し倒して無理やりやっちゃいそうなんでしょ?」
「そう……! もう、ぶっちゃけ、そう! だから、後生です、俺の理性が生きているうちに」
「だったら、俺、もう、その時はその時でいいですよ」
「ん!?」
「いや、俺が焦らし続けて、それでブチ犯される時が来るなら、それでいいですよ」
「……ん? いや、すみません、意味を理解しかねてて」
「やあ、だからね? 俺たちは付き合ってるわけじゃないですか」
「はい」
「俺ばっかり挿れてて、ずるいですよね?」
「……はい」
「こんなの、いつスルガさんの理性がぶっ壊れて、俺がブチ犯されてもおかしくないし、スルガさん悪くないじゃないですか」
「……」
「悪いのはヤらせなかった俺なので。だから、それは俺の責任なので、その時はそれで、俺は文句言いませんよ。」
「……」
「分かりました?」
「……つまり、俺がぶっ飛んだ時にツードさん犯しちゃうリスクを、承知してるってことですよね」
「そうです」
「……そして、つまり、俺が理性飛ばして性欲の魔獣になって犯罪スレスレの強姦でもしない限り、ツードさんはケツ許さないって……ことですよね?」
「あー……。……バレました?」
「可愛い子ぶっても駄目ですよ」
「スルガさぁん、俺、もう酔ってきちゃった」
「いやいやいやすぐ余計にやりだすでしょ、騙されないですよ、ってかマジで可愛いなあ、もう!?」
「チョロすぎだろ、可愛いのはどっちだよ」

 

 

20201104