食べてしまいたいぐらいかわいい

 セックス中のジェンは普通にえっちだ。薄暗い部屋で見上げるジェンはすごくいい。必死に俺とセックスしようとして、俺を愛撫して、俺で感じているジェンなので、もちろん可愛い。そういうときのジェンは前しか見てない。目の奥まで使って俺を見ている。じっと飲み込むように俺を見て、吸い込むようなキスをする。昼には涼しそうに本を読んでいる顔に、じっとり汗が浮かんでいるのが好きだ。こめかみの髪の毛が、丸くなったまま少しだけ額に張り付くのが好きだ。だんだんと玉になった汗が、顎から落ちるのも好きだ。その塩気を確かめてみたくなる。

 

 セックス中じゃないときのジェンも結構えっちだ。いつも窓辺の席に座ってぼうっとしているのがいい。本を読んでいるときも好きだけど、何もしていないときは面白くて好きだ。ジェンは陽の光を浴びてそこにいるとき、それだけで何かをしているみたいな感じがする。俺だったら絶対に暇で仕方ないのに、ジェンはそのなんにもない時間を過ごすのを、まるで風呂にでも入っているみたいな無駄じゃない時間にしている。その時のちょっとどこを見ているか分からない視線が好きだ。何をしているのかまったく分からないその状況ごと好きだ。ジェンのせいで、その時間に形ができている。柔らかくて、ほんのりと甘いような味がする。

 

 食べてる時のジェンはもっとえっちだ。ジェンが何かを食べてるのが既に面白い。ものとか食べるんだ、お前、って毎回思う。チキンを噛むジェンの口元が好きだ。けっこう普通にかぶりつく。俺と同じものを食べているジェンが不思議だ。ジェンの口の中で、ジェンの舌が、俺と同じチキンを、同じ味に感じてる。不思議だ、最高に面白い、めちゃくちゃに可愛い、すっごく好きだ。そのままチキンを押しのけて、俺がジェンの唇にかぶりつきたい。本当に同じ味がするのか確かめたい。貪りつくしたい。チキンの味なんかしなくたっていい。全部ジェンの味でいい。

 

 眠っているジェンもかなりえっちだ。セックスの後そのまま眠りこけているジェンを見ていると、非公開で良かったな、これ、と思う。だってこんなやらしいの、大勢に大公開したらヤバいことになるに決まってる。ジェンの汗はすぐ乾くし、乾いたら皮膚は元のさらさらに戻る。ジェンに触れているシーツの部分だけ、シルクみたいにすべらかに見える。ジェンは肌がなまっちろいから、月の光でうっすら青くなる。閉じたままの目と、メガネのない顔と、なんの傷もない首と、少し浮いた鎖骨と、さらさらで青い肌。好きだ。この肌全部。裸のジェンがまるごと好きだ。

 

 俺しか見れてないのか、これ、ほんと。これ全部、俺だけが見てて、俺だけが食べてて、そういうことになるのか。

 絶対、非公開でよかった。だって、俺が初めに見つけた。

 俺が見つけた色んな味のジェンだ。どれもこれも大好きな味がする。

 ぜんぶ俺のだ。

 味わい尽くしてやりたい。

 

 

2020.05.12